2020年9月24日木曜日

クリストファー・ノーランへ愛をこめて

 約1年ぶりのブログです。去年の秋は本を書いてて忙しすぎて、それ以外で文章を書く余裕がなかったことが主な理由。本のおかげで、いろんな媒体に文章を寄せることも出来て幸せな年でした。その後、パラサイトが歴史を作ってコロナが広がってあっという間に今に至る。人生、もっと大事に生きないとダメです。

さて、年始から楽しみにしていたノーランの新作Tenetを見てきました。感想は、いくつもの波になって押し寄せて来たけど、鑑賞後一番最初に思ったのが、「究極に贅沢に撮ったメメント」でした。ノーランはああいう、時間軸を変にした映画が本当に好きなのね。そしてそれを物凄く面白く撮れる監督なのね。今回の作品は、たぶん半分くらいしか理解していないと思うし、見落としている鍵になるシーンも半分以上あると思うけど、めっちゃ面白かった。最初から最後まで緊張感を全く途切れさせない演出は見事だし、とにかく理解できないのに面白くするってすごいと思う。マトリックスとインセプションとテネット。どれも理解してないけど大好き。(マトリックスはノーランではありませんが。)

見ながら感じていたことは、映像の面白さももちろんだけど、音響とか音楽とか音の凄さ。あれが緊張感をみなぎらせていると思うし、面白さを倍増させている。でも実は、音響に拘るばかりにセリフのトラックが後回しになっちゃって、セリフが聞こえず理解ができない、と言う批評を読んでなるほどと思いました。私たちはセリフが聞こえない時、無意識に字幕を追って理解を補っているけど、英語だけで理解しなくちゃいけない人にとっては、ただでさえ難解なテネットのような作品でセリフが聞こえないのは致命的。なんだか相当初歩的なところでミスをしている感が否めないけど、ノーランにとってはそれくらい、音響を効かせることが大事なんでしょう。セリフを犠牲にして、ってすごいけど。私たち、字幕を付けて貰える国の人は、もしかしたらノーラン作品をより楽しめるのかも知れず、アメリカ国内より海外の方が興行成績や作品の評判が良いのも、そういったところに理由があるのかも知れません。

今回コロナ禍において、劇場に観客を呼び戻すきっかけとなる目玉作品として、春から待望されていたテネット。結果的にちょっと難しすぎて、アメリカでは厳しい結果となったけれど、クリストファー・ノーラン大天才にはこれからも、彼にしか作れないオリジナリティに溢れた新作を作り続けてほしいと心の底から思います。今回の作品は、本当に彼らしく、私はとても好きでした。次も心から期待しています。

2019年10月22日火曜日

今年のオスカー主演男優賞、ジョーカーよりもこっちの方が気になる

お久しぶりです。既にオスカープレシーズン開幕しておりますが、ここ1ヶ月ほどラグビーワールドカップに夢中でニュースチェックを怠っておりました。すみません。近所に住む國學院久我山→帝京大学ラグビー部出身のラグビーエリートと共に観る試合は格別で、印象に残るのは序盤のオールブラックスVS南ア戦、先日のフランスVSウェールズ戦、そしてなんといっても日本VSスコットランド戦辺りですね。連日良いものを見せて貰って感激です。実際に観戦に行ったオールブラックスVSナミビア戦はあまりの力の差にちょっと切なくなりましたが。

で、ラグビーよりも面白いオスカーネタは出てこないものかしらと思っていた矢先、ちょっと興奮する記事が出てきたので久々にブログを更新することにしました。それは、ダブル主演でどちらが助演に回るかと噂されていた Ford vs. Ferrari のクリスチャン・ベールとマット・デイモンが、二人そろって主演でオスカーレースに参戦することが決まった、というものです。どちらで参戦するかというのは、その作品の配給会社がオスカーで俳優を推す際にどのカテゴリーに向けてプッシュするかを決める、と言う意味なのですが、昨今のオスカーはこの後援がない限りノミネートを受けるのはまず無理なので、配給会社のこの決断はものすごく大きい意味を持つのです。私、このトレンドが嫌いで、いつも不満に思っていたので、今回のこの英断にはすこぶる興奮しました。例えば去年の「女王陛下のお気に入り」。あれ本来はオリビア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズの3人が主演とみなされるべきもので、一人が主演、二人が助演というのは正しくないわけです。でも3人が主演になっちゃうと、そこで票が割れてしまって受賞の可能性が減るから、配給会社は勝手な感覚で主演、助演を分けるわけです。絶対おかしい。このカテゴリーの混同はいつから正当化されるようになったのか。私はこれまたハーヴィ・ワインスティンが始めたと思っています。2002年度のオスカー、「ギャングオブニューヨーク」であまりにもすごいダニエル・デイ=ルイスの演技を見たハ―ヴィは、これは主演男優賞を狙えると考え、どう考えても助演のDDLを主演男優としてプッシュ。DDLは見事主演男優賞にノミネートされます。そのせいで、正当な主演男優であったレオは全く蚊帳の外に置かれ、あの年の賞レースはDDL一色でした。最終的にDDLではなくエイドリアン・ブロディがサプライズウィナーとしてオスカー受賞したのは、あれはどう考えてもDDL主演じゃねえだろと思った投票者が若きエイドリアンを選んだからなのではないかと、私は未だに思っています。

カテゴリーの混同に違和感を覚え、心酔するDDLのノミネートですら気分が悪かったのは、私がオスカーを見始めた頃にはその混同が見られなかったからです。名作「アマデウス」ではサリエリ役のF.マリー・エイブラハムとモーツァルト役のトム・ハルスがダブルで主演男優賞にノミネートされ、エイブラハムが見事受賞をしました。エイブラハムは受賞スピーチで、「今ここにたった一つだけかけているものがあるとすれば、トム・ハルスが一緒に横にいないことだ」と、自分の受賞は彼なくしては不可能だったことを言い、大きな拍手が送られました。「テルマアンドルイーズ」の時のジーナ・デイビスとスーザン・サランドンも二人とも主演女優としてエントリーし、ダブルでノミネートされたけど、あの映画もどちらかが助演になるなんてこと考えられないですよね。ダブル主演の映画というのはよくあるものなのだから、それは二人とも主演として扱われないとフェアじゃない、と私は思います。

今年はたまたまダブル主演の作品が多く、The Lighthouseではロバート・パティンソンを主演、ウィレム・デフォーを助演として推すことが既に発表されているし、Two Popes のアンソニー・ホプキンス、The Irishman のアル・パチーノも助演に回るだろうとかささやかれています。そんな中、二人とも主演で、と決定したFord vs. Ferrari には心から拍手を送りたい。今年は主演男優も助演男優もものすごく混みあってると今から言われている中、どちらにしてもノミネートは容易ではないけど、主演での久々のダブルノミニー、私は見たいな。

2019年4月27日土曜日

ブラッククランズマンをようやく見ました

ツイッターを開設してからの3ヵ月、毎日のアップデートにばかり追われてブログを全く更新しておりませんでした。すみません。

昨日1ヵ月ぶりに劇場に行きました。ずっと見たかった「ブラッククランズマン」。やっと見ることができました。まず思ったのは、さすがスパイク・リー、面白いなと言うこと。スパイクの映画は面白くなかったことがほとんどない。私は基本的に好きです。そして相変わらず、説教臭いなと言うこと。ブラックシネマを引っ張ってきたパイオニアだから当然のことなんだけど、今回の作品はその、アメリカにはびこる差別意識について云々っていう説教臭さの他に、NYUのフィルムスクールで教鞭をとるようになった教育者としての説教臭さを感じられて。それはたぶん、作品がいきなり「風と共に去りぬ」のワンシーンで始まり、途中には「国民の創生」のカットがたっぷりと流されたところに起因してるのだと思います。

大学生の頃、社会学を専攻していた私は、アメリカの大学で「女性とメディア」「映画における偏見」と言う二つの女性学のクラスを取りました。女性学は社会にはびこる差別や偏見について学ぶ学問で、この二つのクラスでは、メディア全般や映画が社会における差別や偏見にどのように影響しているかを学びました。で、そのクラスでそれぞれ取り上げられたのが、「風と共に去りぬ」であり、「国民の創生」だったのです。「風と共に去りぬ」に出てくるマミーは、「安全な黒人」「良い黒人」の代表的なステレオタイプで、この作品はその社会的思想を定着させたと言うことで、かつての大名作も今や社会的観点から問題作として取り上げられるものなのだ、と私はこの授業で初めて知りました。「国民の創生」はさらにその上を行くもので、メインのストーリーはKKKの誕生を祝う内容です。映画の父と呼ばれたDWグリフィスが映画の創成期に作ったアメリカ初の長編映画である上に、さまざまな手法を用いた高い完成度で、長い間「傑作」「手本」と尊敬されて来ました。この2本はつまり、アメリカ社会の差別や偏見と映画を考えた時に最初に出てくる代表作であり、スパイクはわざわざその分かり易い2本を自分の映画の中で紹介したのです。

久々に「国民の創生」のフッテージをふんだんに見せられて、ふと私は数年前に作られたもう一つの「国民の創生」について思い出しました。ネイト・パーカーと言う黒人監督兼俳優が奴隷解放について描いたTHE BIRTH OF A NATIONです。2016年のサンダンス映画祭でお披露目され、ものすごい話題になりました。観客賞を取り、この年のオスカーに絡んでくる間違いのない1本と言われ、史上最高の高値で配給権が買われました。「国民の創生」の原題と全く同じタイトルがつけられたこの作品には、アメリカ社会の黒人差別への批判がこめられ、ネイト・パーカーという無名の俳優は、一躍時の人になりかけたのです。が、映画が公開され話題になった直後、この人が大学時代に女性をレイプし、その女性はその後自殺してしまったことが明るみに出ます。そしてこの作品はアカデミー賞には全くスルーされ、その後の彼のキャリアはほとんど日の目を見ず、今日に至るわけです。

マイノリティとして搾取され、差別されることの不条理と辛さを痛いほどにわかっているはずの彼でも、性の上では力を持つ者の立場しかわからない。この事件で私は、社会における差別構造の複雑さを痛感しました。白人男性がピラミッドの頂点なら、有色人種の女性は、底辺です。先月引退したイチロー選手が、「アメリカに行って初めて、弱いものの気持ちが分かるようになった。だから若者にもぜひ海外に行ってほしい」というようなことを言ってましたが、これはおそらく、海外で暮らしたことのある日本人は誰でも思うところでしょう。日本にいる限りは自分は主流で、外国人の不安や不便や無力感は感じることができません。人間の想像力なんてたかが知れてるものだから、知識として差別や偏見の苦悩について学んでも、自分がその立場に立ってみなければ、なかなか自分事として感じ取ることはできないものです。だから私たちは、知ったつもりにならないで、常に相手の話に耳を傾け考えることが本当に必要なんだと思います。

普通に楽しむだけでなく、見た後にいろいろと考えてしまうブラッククランズマン。さすがスパイク、見てよかったと心から思った一日でした。

2019年2月19日火曜日

作品賞は獲らずともーヨルゴス万歳

今年の8本の作品賞候補の中で一番楽しみにしていた「女王陛下のお気に入り」ようやく見てきました。去年の秋のエントリーにも書いたけど、「籠の中の乙女」以来ヨルゴスは私にとって、新作が出るたびわくわくする監督の一人。今回はいつもより「普通」の映画だと聞いていたけど、本当にいい意味で見やすく、予想以上の素晴らしい作品でした。大満足。とりあえず今まで見た6本の中ではぶっちぎりの1位。作品賞には賭けないけど、いや~、好きだわこの映画。

女優3人はそれぞれに素晴らしく、確かにオリビア・コールマンの演技はかなり印象的なものだったけど、正直彼女は主演というよりはアンサンブルの一人なので、本来は助演にノミネートされるべき。彼女を主演にするなら、レイチェルとエマも主演にしなくてはいけません。二人も本当に素晴らしかった。3人とも素晴らしすぎて、それ以外の何もかもが良すぎて、しかも終わり方はヨルゴスらしい余韻を残すもので、いや~、ほんとに久々に映画らしいいい映画を見た。衣装と美術は絶対これにします。つーかどのカテゴリーも、迷ったらこれに入れるわ。だって好きなんだもん。

これに関連して、一つだけ確信を持ったこと。それは、主演女優賞はもう何の迷いもなくグレン・クロースに入れるということ。オリビアの演技はかなりわかりやすくて素晴らしいと思ったけど、主演というところを考えると3人で1人くらいのもの。それに対してグレンは完全に主演で、押さえた演技で地味だけど、本当に体中から染み出る内面を目の演技一つで演じて、映画そのものを背負っているわけで、その重みが全然違う。だから私は何の迷いもなく、主演女優賞はグレンに入れます。ま、そうじゃなくてもグレンに入れてたんだけどさ。グレン、本当にこれで受賞してほしい。心の底から祈っております。

明日はアトロクで予想を話す予定だけど、正直全然固まってないので、各カテゴリーに3人ずつくらい候補がいるような予想になっちゃうかも。でもしょうがない。今年はかなりイレギュラーな年なので、半分当たれば上出来くらいの気持ちで頑張ります。あと5日間、悩みに悩んで最終ベットは当日の朝にツイッターで!

2019年2月3日日曜日

DGAの追い打ち

DGA(全米監督協会賞)が発表になりました。

本来DGAは、本戦で監督賞を誰が獲るかを占うのに参考にする賞なのですが、正直今回はそこに関しては何のヘルプにもならない結果で。というのも、ほかの賞も総なめにしてきたアルフォンソ・キュアロンが獲るだろうと99%の人が予想し、その通りになったので。もうこの項目に関しては、何も言うことがありません。

今日の結果で私が頭を抱えてしまったのは、長編ドキュメンタリー賞。なんと、オスカーにノミネートされていない、Three Identical Strangers の監督が受賞しちゃったのよ。ちなみに昨年12月18日付の当ブログ「順当すぎる外国語映画賞ショートリスト」の中で、私が予想したドキュメンタリーのノミネーションは下記5作品。

Free Solo
RBG
Three Identical Strangers
Minding the Gap
Won't You Be My Neighbor?

お気づきでしょうか。先月一番重要なPGA(全米製作協会賞)を受賞したWon't You Be My Neighbor?と、今日DGAを受賞したThree Identical Strangers を除いた3本は、ノミネートされてるんです。つまり、その3本の中のどれかがDGAを獲ったら、私は長編ドキュメンタリーをその作品にしようとたくらんでいたわけです。なのに、よりによって、なんでThree Identical Strangers なのよ?!!これならまだ、Won't You Be My Neighbor? が受賞した方が、気持ちのザワザワがなくて済んだわ。

というわけで、今年の長編ドキュメンタリーはどれにしていいのか指標を失ったわけで、ロジックがないので勘に頼る以外にありません。そうなってくると自信は全くないわ。今の気持ちとしては、Free Soloにしようかと思ってるんだけど、RBGは、題材になっているルース・ベイダー・ギンズバーグという女性最高裁判事自体がアメリカではとても人気者な上、90歳超の彼女が授賞式に現れるんじゃないかなんて言う噂もたっているから、彼女が来るなら絶対それに受賞させないと、というロジックが働く可能性もあり。あと3週間、そのあたりの情報を仕入れつつ、最終的にどっちにするかは決めたいと思います。Minding the Gap の可能性もまだ捨ててないよ!

2019年1月28日月曜日

SAG発表!で、暗中模索?五里霧中?もうどうして良いか分からない

SAG出ました!とりあえずはグレン・クロースおめでとう!!これでもう、夢ではなくて本当にオスカーに一歩近づきました。いつの間にかフロントランナーだよ。嬉しすぎるよ。BAFTAがオリヴィア・コールマンに行ったとしても、オスカーはグレンにとって欲しい。「危険な関係」以来の願いです。本当に祈ってる!!

にしても、今年のオスカーほど混乱極まりない年は今までにないんじゃないかな。SAGで方向性が見えたのは主演女優と助演男優だけで、これほどアンサンブルの結果が役に立たない年もない。「ブラックパンサー」だよ?本戦で獲るわけないじゃん。作品賞、何を指標にしたら良いのか、本当に本当に困ります。PGAの結果を受けて、「グリーンブック」が思いのほか持ち直してきたから、もしSAGでヴィゴが獲るようなことがあったら、ここから「グリーンブック」の巻き返しがあるかも、と思ったけど、ふたを開けてみたらラミ・マレックだし、GGとSAG獲ったおかげで、いつの間にかラミがフロントランナーみたいになっちゃってるし、もうこれで「グリーンブック」はほとんど重要性なくなっちゃったし、混乱しまくりでわたし、何を書いていいのかも分かりません。ここまで本命がいない年って30年の私のオスカー人生の中でも初めてかも知れないな。1本に絞り切れないとしても、普通は2,3本の有力候補がある物だけど、今年に関してはどれも強くないのよね。本当に本当に分からない。

いつものようにノミネーションの数で行くと、SAGには一切絡んでこなかったROMAと、SAGで3人もノミネートされたのに誰も受賞できなかった「女王陛下のお気に入り」が作品賞有力ってことになるんだけど、どっちもアート映画(のはず)だし、外国映画(メキシコとイギリス)だし、やっぱり作品賞を受賞するタイプの作品ではないのよね。じゃあ生粋のアメリカ映画の「グリーンブック」が獲るかというと、これまた決め手に欠ける感じがあったり、結局マハーシャラ・アリ以外は強くなかったりで、あんまりそこに行く気がしない。。。「アリー」に至っては完全に失速してもう望みはない(と思いたい)し、「ボヘミアン」「ブラックパンサー」はノミネートされただけで光栄です、って類の作品だと思うので、そうやって消去法にしていくと「ブラッククランズマン」??でもそうとも思えないのよね~。やっぱり普通にロジックだけで行くと、PGAとGGを受賞し、トロントで観客賞を獲った「グリーンブック」がフロントランナーと考えるのが一番正しいのですが、今年の私はこのロジックにどうしても同意できない。見ていないから何とも言えないけど、やっぱり直感的に、この映画はなんか勢いが感じられないから無理な気がするのです。いい映画らしいんだけどね。

というわけで、今年はもう、とりあえず片っ端から見て行こうと思います。全然興味ないけどまずはネットフリックスで手軽に見られる「ローマ」から。2月中旬になったら「女王陛下」見て、ベルリンかロンドンで「ブラッククランズマン」と「グリーンブック」を何とか見て、最終的には自分の趣味で決めようかな、と。

あ、「ヴァイス」の存在忘れてた。根拠ないけど、この映画からは何のVibeも感じないから、これはないんじゃないかな~。とはいえ、今年は本当に自信ありませんけど。

2019年1月23日水曜日

ノミネーションの夜は明けて(アトロクで話しきれなかったので)

91回アカデミー賞、ノミネーション発表になりました。まずは、グレン・クロースおめでとう!ウィレム・デフォーおめでとう!そのほかの人もおめでとうだけど、エミリー・ブラントはかわいそうだったな。正直、ここまで「アリー」が失速してるなら、その主演女優賞、ちゃんとした女優のノミネートに使ってほしかったわ。

昨日のノミネート発表は、いつもの通りアカデミー賞仲間と共にばっちり最初から最後まで一喜一憂しながら見守りました。一番の驚きとなる助演女優賞が一番最初の発表で、聞いたこともないメキシコ人の名前が呼ばれたものだから、そこから先全部盛り上がって行けたのがとても楽しかったです。この「ROMA」のマリナ・デ・ダヴィラがノミネートされた瞬間に、主演女優賞の最後のひと枠はエミリー・ブラントの手を去りヤリッツア・アパリシオのものになったことを確信したし、この後のROMA快進撃を確信したわけで、やっぱりノミネーションは授賞式に勝るとも劣らない楽しさだよね、とうきうきしながら鑑賞しました。

同じような感じで脚本賞にポール・シュレーダーがノミネートされたとき、主演男優の最後のひと枠はイーサン・ホークのものになったと思ったので、主演男優賞の3人目がウィレム・デフォーだった瞬間にはハイファイブして喜びました。これは本当にうれしい。彼のゴッホ役、最高です。

主演女優賞は、ほぼ順当(エミリー・ブラントを除いては)だったけど、今回のオスカーの最大の関心事は、グレン・クロースが7度目の正直で悲願の受賞をできるか否かなので、ここは最後までぶれずに彼女を応援していきたいと思います。今週末のSAGでGagaが受賞とかいう嘘みたいな展開にならない限り、ここはコールマンとクロースの一騎打ちのはずなので、今週末、祈るような気持ちで見ています。コールマンのBAFTAは仕方ないとして、SAGはクロースにとってほしい。「天才作家の妻」は、映画自体も見ごたえがあって面白いから、日本でヒットするといいなあ。

もう一つ、今週末のSAGで行方が気になるのが主演男優賞。ここでクリスチャン・ベイルが獲ったらもうこれは完全ロックだと思うんだけど、もしここでヴィゴが獲るようなことがあったらわからんよ。この前のPGAでグリーン・ブックが作品賞を獲ったのはこのシーズン一番の衝撃だったし、これによって今までの流れがガラッと変わってしまったから、ここでヴィゴが獲るようなことになると、グリーン・ブックに勢いがついちゃう可能性あり。ほかの3人(ブラッドリー、ラミ、ウィレム)が獲る可能性はほとんどないと思うんだけどね。

今年は作品賞にクリアーなフロントランナーがいないので、今のところはまだまだ様子見の状況です。昨日のノミネーションの結果だけを言うと、主要6部門(作品賞、監督賞、脚本または脚色、編集、主演、助演)を全部網羅しているのは「女王陛下のお気に入り」「ヴァイス」の2作品だけ。でもこの二つはどちらも作品賞を獲るとは全然思えないので、それ以外となってくるとじゃあ一体どれなのか?ROMAは最多ノミニーとは言え白黒のメキシコ映画、グリーン・ブックは白人目線の黒人映画と言われて黒人層からのサポートは得られないと思われるし、そうなってくると大穴はブラッククランズマン??もう何がなんだかわかりません。(そしてそれ以外の作品は作品賞を獲る可能性はないと思う。)私としてはスパイク・リー世代なので、スパイクが監督賞に初ノミネートされたのも万歳だし、なんなら受賞もしてほしいと思うくらいなのだけど、こちらもまた、本人が自分で「ダークホース(シャレです)」と言うくらい、まあフロントランナーからはかけ離れた存在なわけです。そう考えると、今年の作品賞を占うにはまだまだ時期尚早で、まずはこの週末のSAG,DGAの結果を待ち、その上で2月中旬のBAFTAの結果を見ない限り、私の予想はまだまだ固まらないなと思う次第です。

「万引き家族」「未来のミライ」について少しだけ触れておくと、正直この2作品はなかなか難しいポジションにいると思うけど、少なくともこれらの関係者は私のあこがれのドルビーシアターに入れるわけで、皆さん楽しんできてね、というくらいな感じ。もしも受賞するようなことがあったらあっぱれ!というのは言うまでもないことです。

今年は珍しく、作品賞のほとんどが授賞式前に公開されるので、私としてはできる限り見てから予想をするつもりです。一番見たいブラッククランズマンが見れない可能性が高いけど、待望のヨルゴスは何とか間に合うし、今から楽しみでしょうがありません。予想自体については、まだ1ヵ月以上もあるので、各前哨戦を経るたびにちょくちょくこちらでアップデートをしていきたいと思います。次回のアトロク出演は2月20日、最終予想はジェーン・スーのツイッターで25日の朝に公開予定です。それまで皆さん、一緒に予想をしながらしばしのお付き合い、よろしくお願い致します。